今日が終わると夏休み。
それは嬉しいけれど……大和くんとは会えないのかな。こんなに仲良くなったのに。1ヶ月以上も会えないとか、さすがに寂しいなあ。
終わったら……連絡先を聞いてみよう。
また、遊んで欲しいって。前みたいに一緒に御飯に行きたいし、もっと一緒にしたいことがある。
もう、周りのことを気にしないでたくさん話しかけて、過ごしたい。
今日が終わったら。
胸が緊張で痛んで、それを力に変えるに深く息を吸い込んだ。
「あ、柿本さん」
待ち合わせ場所には柿本さんがひとりで立っていた。
私と大和くんをみて「早いね」と小さな声で言う。
「俺、ちょっと放送室見てきていいか」
「あ、うん」
大和くんが立ち去って、ふたりきりになると気まずい雰囲気が漂ってくる。なにか話さなくちゃと思いつつ、うまく言葉に出来なかった。
……っていうか私、柿本さんに嫌われているんだよねえ。あれからこうやって話す機会がないままだったんだけど。
かといって謝るのもどうかと思うし……。仲よく話しかけるのも、違うよね、きっと。嫌われているならそんなの迷惑に違いない。
うーん、うーん、と頭を悩ませていると、かすかに「ごめんね」と聞こえてきて視線を彼女の方に向けた。
「この前、ごめんなさい。……やつ、当たりでした」
「え!? え、あ、私の方こそ……無神経なこと、しちゃって」
「違うの」
まさか柿本さんから謝られるなんて。
慌てて手をブンブンと顔の前で振って、私も頭を下げる。でも、彼女は優しく左右に首を振って悲しそうに微笑んだ。
「嫉妬、してただけ。相田さんは外部組で、私は内部組。なのに……あたしは友達もいない。そして相田さんは、内部組の友だちに囲まれていて……羨ましかったの」
「そ、そんなこと」
「ほんとは何度も、手を差し伸べてくれて嬉しかった。でも、友だちじゃない。たくさんいるあなたの友だちにあたしは含まれてない」
そんなふうに思われていたことに驚いて、言葉が出ない。
「勝手に嫉妬して、勝手に優しさを卑屈に受け止めてたの」
初めて、柿本さんと目と目を合わせて会話をしている。