「……ずっと、輝と電話してから考えてたんだけど」

「うん?」

「大和のこと。私は輝の話を聞いてもやっぱり、危ないやつだって思う。どんな理由があっても学校で暴れるんだから問題はあるじゃない。でも……私が飯山の気持ちの方を信じたい気持ちと、輝の気持ちはきっと、一緒なのよね」


 そこまでいって、少しだけ茗子が言葉をつまらせた。
 そして「バレてると思うけど」とふうーっと息を吐きながら告げる。


「飯山のこと、好きなんだよね、私」

「ん」

「だから、私は飯山のことを信じたい。大和のことを好きな輝には、理解できないかもしれない。私も大和のことも大和なんか好きなことも理解できない」


 素直な言葉。包み隠さず告げられていることがわかる。

 私も同じように思っている。

 飯山くんのほうを信じることはちょっと、難しい。確かに明るい性格だけれど、大和くんの話を聞いていると、素直にそれを受け入れることは今はまだできない。


 でも。


「でも、それで私と輝が険悪になるのは、違うと思う」

「……うん」

「私、輝のこと高校に入ってきてからしか知らないけど、一番仲がいいと思ってた。だから、大和のことも私にちゃんと言ってくれて嬉しかったよ……って! ちょっと!」


 話の途中でぎゅうーっと茗子を抱きしめる。
 なにすんのよ! と茗子が叫んでも気にしないで、涙をぼろぼろこぼしながら抱きしめ続けた。


「茗子、私、茗子のこと、大好き!」


 ごめんね、ごめんね。
 あの日からずっと考えてくれていたことも、今こうして一緒に話をしてくれることも。


 ありがとう、ありがとう。
 


 ふたりで教室に戻ると、貴美子はほっとしたように笑ってくれた。
 教室の隅っこにいる大和くんと目があって、かすかに笑ってくれた。