バスに乗って、次に電車に乗り込む。
 いつものように小一時間かけてたどり着く学校はいつもと違うように見える。

 目の前には、大和くんが歩いているのが見えた。

 声をかけたい。挨拶をしたい。もう人にどんなふうに思われたって構わないから、昨日までみたいに並んで歩いたり、色んな話をしたい。


 でも。
 もう少しだけ我慢だ。


 もともと接点がなかった私たち。今日、変に注目されないように今までと変わらない態度でいようという話になった。


 だからかな。
 こうしてみると、大和くんが今まですごく遠くにいたんだと思う。あんなにも一緒にいたことがウソみたいに、彼はひとりで立っている。

 近くの生徒がそっと彼を避けるのがわかる。


 きゅっと唇を噛んで、大和くんの背中から視線を逸らした。


 靴箱の近くに行くと、いつもいた鷲尾先輩と浜岸先輩は見当たらなかった。

 期末テストの順位表はまだ貼りだされていなくて、ほっとしながら廊下を歩く。期末テストは朝から貼りだされないのかもしれない。終業式の後とか帰りだろうか。


 教室の前にやってくると、胸がぎゅうっと痛んだ。
 それを隠すように拳を作ってドアを開ける。

 部屋の真ん中に、いつもの友だちが輪になって座っている。いつもは私と学校に行く時間が一緒の茗子もすでに教室にいた。

 目があった瞬間に、涙が出そうになってしまう。

 あの日、茗子に電話してから、私たちは連絡を一度もしなかった。

 好きだと告げて「わかった」という言葉だけを残して電話を切られてしまってから……なんの話もしていない。

 声をかけてもいいのだろうか。茗子はみんなにも話をしたかもしれない。みんなは、私のことをどう思っているんだろう。
 そう思うと怖くて脚がすくんでしまう。


「おはよう輝!」

「……あ、おは、よう」


 そんな私の気持ちなんて知らないかのように、いつものように貴美子が大きな声で私に呼びかけて大きく手を振る。

 茗子はなにも言わないけれど、みんなは……いつもどおりだ。