知り合い?
ちらりと隣の蒔田先輩を見ると、「あ」と思い出したかのように口を開けて彼を指差した。
「去年から不登校の。この前鷲尾くんが話していたでしょ」
榊先輩はあまり驚いた様子ではなく、淡々と告げる。
そういえば、そんな話をしていたっけ。
まさか……不登校の人が、こんな大胆なことをするなんて。
「やっぱり、きみだったんだね」
「わかって、た、のか」
「お前ら知り合いなのか?」
「離せよ! そうだよ! お前と同じ学年の来栖だよ! 浜岸みたいな奴はおれのことなんて知らないだろうけどな!」
ばっと先輩の手を振りほどいて、睨みつける。
それでも浜岸先輩は首を傾げたまま彼を見つめていた。きっと思い出せないのだろう。
……つまり、そういう関係だったんだ。
ヒエラルキー頂点に近い浜岸先輩のことは誰もが知っているけれど、彼らのように……最下層だという人は、同じ学年でも、同じクラスでも、記憶に残らないということ。
学校に1年近く来ていないというならなおさらだ。
「鷲尾、なんでこんなやつらと」
来栖という先輩は、腰を上げてパンパンとズボンのホコリを払った。隣りにいた浜岸先輩や大和くんを睨みながら言う。
「来栖こそ、なんでこんなことを」
先輩の声がかすかに震えて聴こえる。先輩の隣の柿本さんは、ただじっと、鷲尾先輩を心配そうに見つめていた。
いつのまにか教室にやってきた立森先輩と七瀬先輩が私の後ろに立っている。
「なんでって、仕返しだよ、学校に。休み中に火事でも起こしてやろうかと思って」
「仕返しって……そんなのただの犯罪だろ!?」
「だからなんだっていうんだよ! この学校がおれらにしていることはおれにとっては犯罪以上だろ!」
「それでも、お前のしようとしたことは犯罪だ」
背後から声が聞こえてきて、みんなが振り返る。
慌ててやってきたのか少し息を切らせた会長が中に入ってきて彼に近づいていく。
「……っ! なんで、会長、まで!」
「脅迫状、やっぱりお前だったんだな」
脅迫状?
そういえば……前に茗子たちが言っていた気がする。ウワサだと言っていたから本当だとは思っていなかった。
でも、会長が言うってことは、本当に、脅迫状が送られていたってこと? それを、この人が……。