「どうして、本人じゃないのにそれがいい道だって言えるの……? わかんないじゃない、そんなの」

「本人じゃないからだよ。それに、いい道じゃなかったとも、言い切れないだろう?」

「だからって……したことが、してきたことが、間違っていたみたいなことを……言わないで」

「そんなこと言ってない」

「だったらどうして! 大和くんが主犯格だったかのようなウワサが広まるの!? それがいい道の結果だって言えるの? いい道に進ませたいなら、することはその場だけを収める方法を示すだけじゃないでしょう?」


 友達に去って行かれた。
 守りたかったのに守れなかった。

 大和くんが今、だれとも親しく付き合わないのは、もうそんなことになりたくないからだ。そんなの、数日話しただけの私にだってわかる。


「そんなの、ただ、大和くんにとって"いい道"なんかじゃなくて、会長にとっての"いい道"なんじゃないの……」


 私の言葉に、落ち着いた表情だった会長の顔が、かすかに引きつった。


「そのとき、会長は大和くんの気持ちに、耳を傾けてくれたんですか……?」

「気持ちに? 声じゃなくて? 口にしないことを察するなんておれには無理だよ。宇宙人じゃないんだから、口があるなら口で伝えるべきだ」

「で、でも」

「思っていることを察して欲しいなんて、傲慢だと思うけどね。なんのために口が付いていると思うんだ。言いたいことがあるなら言えばいい。それをしないなら、思っていないのと一緒だ」


 そのとおりかもしれない。
 だけど。それでも。

 会長の畳み掛けるような口調に、うまく言葉が紡げなくなってぐっと奥歯を噛んだ。

 どう言えばいいのかわからない。そもそも……私の思っていることが正しいと自信を持っているわけじゃない。

 伝えることから逃げ出した私にとって、会長の正しい言葉が胸に突き刺さる。だから、否定したいだけなのかもしれない。

 それでも。どうしても、心が受け入れられない。


「お前には、俺の気持ちも、こいつの、相田の気持ちも、一生わかんねえだろうな。放送部のセンパイたちのこともな」


 大和くんの声はかすかに震えていた。
 見上げれば、今にも泣きそうな顔で笑っている。

 それを見ると、こらえていた感情が涙になって溢れてしまいそうになった。