「あたしたちどこで見張るー?」
「ああ、そういやそうだな」
「見張るのはいいけど、ひとりにはならないでくれよ。ふたりで行動してくれ」
「んじゃ階段の一番上のところで隠れるぅ? 浜岸が一緒ならいいでしょー?」
確かに階段なら、人が歩いてくるとすぐに分かるだろう。
浜岸先輩も蒔田先輩の意見に賛成したのか、なにも言わずに出て行った。
私と大和くんは、ここにいればいいのかな。
「あんたは、なんで俺たちと一緒に集まったんだ?」
どうしていいのかわからず近くの椅子に座ろうとすると、大和くんが会長を見つめながら言う。
あまりにも低い声でびっくりしたけれど、表情からはあまり怒りを感じなかった。
だからこそ、心から向き合って、問いかけているのがわかる。
それを会長も感じたのか、いつも貼り付けている笑顔ではなく、真剣な表情で椅子の背もたれにもたれかかってから「さあ?」と答えた。
「俺は、あんたがしたことを、言ったことを今も許せない。そんなあんたが、なんのために……あの人たちに近づいたんだ?」
「……『見て見ぬふりすることが、いい場合もある』『彼は耐えていた。戦っていた。それをきみは悪い言い方をすれば……踏みにじったんだ』だったっけ? あのとき、おれはきみにそう言った」
「よく覚えてんじゃねえか」
「『きみは成績もいい。こんなことで問題を起こさず、将来のためにももう忘れたほうがいい』っていうのは、おれじゃないよ」
「どーせお前も一緒の意見だったんだろ」
その会話が、大和くんが言っていた友達とのことだというのはなんとなくわかった。
「あのときのことを、おれは間違っていたとは今も思ってないよ。彼はもう転校したあとだ。どうあがいたって覆らないならば、この先、きみにとって一番いい道を示しただけ」
「……いい道?」
話を聞いていただけだったけれど、その言葉を聞いた瞬間、口にしてしまった。
——『そのほうがいいと思うの』
お母さんのほっとする顔が浮かぶ。
それは、私にとって"いい"のではなく、両親にとって"いい"ということだった。