「私、やっぱり先輩のこと好きです」

「なにー急に! 褒められるの弱いんだからやめてよー」


 ケラケラと声を出して笑う先輩は、可愛らしくて、自由な感じがある。だけど、こんなふうに人を大切に思ってて、行動に移せる人。

 好きな人を好きだと、自信を持っている人。
 強くて、優しくて、素敵だなあ。

 私もいつか、好きな人と付き合えたら、そんなふうに強くなれるのかな。

 ちらっと大和くんに視線を移したけれど、退屈そうな顔を見てため息を落としてしまった。


 ……大和くんと、とか、限りなく無理な気がする……。
 好きになってもらえる自信がない……。


「どうでもいいけど、お前らって付き合ってんのか?」

「は?」

「っえ!?」


 話をぼけっと聞いていた浜岸先輩が、首を軽く傾けて私と大和くんを交互に指差した。

 いや、いやいやいや!


「そ、そんなわけないじゃないですか!」

「付き合ってねえっすよ。同じクラスなだけ」


 慌てて否定すると、大和くんも同じように否定を口にした。

 自分でも違うって言っといてなんだけど……大和くんに言われると、なんというか。軽くショック。
 まあ、違うんだけど。正しいけれど。


「そんなふうに否定しちゃだめじゃーん」

「なんで? だって違うし。なあ?」

「あ、う、うん」

「ほら」


 なにこれすごい切ない!

 確かに付き合ってないけど。そんなあっさり、動じることもなく否定されると……全く望みなんてないんだと思い知らされる。

 期待してないけど! でも! 夢くらいは見させてよ!

 好きだって自覚してばっかりだっていうのに……なんでこんな数時間後に失恋しなくちゃいけないんだ……。


「……まあ、いいけど」


 私と大和くんの顔を交互に見てから、浜岸先輩は理解できないと言いたげに呆れたそぶりで告げた。





 その後、適当に話を続けながら時間を潰していると、いつのまにか8時近くになった。

 なんだか緊張してきた。

 時間つぶしに携帯でマンガを読んでいたけれど、頭に入ってこない。
 七瀬先輩も落ち着かない様子だ。

 浜岸先輩は眠っていて、蒔田先輩はずっとスマホを眺めている。大和くんはイヤホンで音楽を聞きながら目をつむっている。もしかしたら寝ているのかもしれない。