「お前頭わりいからこんなことできるように見えねえよな」
「浜岸くんってひどいことさらっと言うよねえー」
「本当のことだろ」
横からケラケラと笑いながら口を挟んだ蒔田先輩をじろりと睨みつける。
浜岸先輩も蒔田先輩も思ったことを正直に口に出し過ぎじゃないだろうか。なんだかヒヤヒヤするんですが……。
「どうせ、ヲタクだと思ってるんだろ」
「はあ?」
「きみらはいつも、そうだ。勉強が出来ない運動ができないってだけで人を決めつけて……ボクにできることがあるとそれを笑うんだ……」
「なに言ってんのお前。笑ってねえだろ」
呆れ気味な口調。けれど、その言葉にウソ偽りは感じられない。
だからだろう。七瀬先輩もぐっと言葉を詰まらせてうつむいた。
「ほらもうー浜岸くんはなにもしなくても感じ悪いんだからさあー」
「なんでだよ! なんもしてねえだろオレは!」
「ほらまた大声ー」
このふたり同じことで毎回もめるなあ……。
なんだかんだ仲がいいのかもしれない。それに浜岸先輩にこんなふうになんでも言えるのってきっと蒔田先輩だけだろう。
まあまあまあ、と間に軽く入って声をかけたけれど、ふたりは気にしないで話し続ける。
「きみらには、わかんないよ」
ぼそっと七瀬先輩がつぶやく。
一瞬なんのことかわからなくて、みんなで顔を見合わせた。
「ボクの特技なんて、ヲタクっぽい機械いじりしかない。きみらみたいに派手な見かけで注目されたり、運動や勉強ができるわけじゃない。だから、みんなに……バカにされるんだ」
ぶちぶちと配線を引っこ抜きながら、いじけるように言葉を続ける。
反応してもいいのかわからない。まるでひとりごとみたいに口をとがらせてぶつぶつと言い続けた。
「なにもできないって決めつけられて。なにかできることがあればそれをバカにされて。そんなの、経験ないだろ」
「まあ……ねーけど」
「ボクにだって……できることがあるんだ。誰にも負けない……! 誰もできやしないだろ! 放送室をジャックすることも、それを誰にもバレないように細工することだって!」
だから。
だから七瀬先輩は、この計画に乗ったのか。