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「あっれー? なんか泣いたぁー?」
放送室に入る直前。蒔田先輩がちょうどやってきて、私の顔を見るなりそう告げた。
涙は既に止まっている。けれど泣いたことはバレバレだったらしい。
「ちょ、ちょっとゴミが」
「へぇー。大和くんあんまり泣かせなでよ女の子なんだからぁー。って言ってもまあ、手をつなぐほど仲良しだから心配ないかあ」
「……っ! あ、いや! これは!」
手をつないでいたことに今更気がついて、ふたりして慌てて離す。
私も大和くんも多分真っ赤だ。ふたりで必死に言い訳を告げるけれど、先輩は「はいはい」と聞き流している。
絶対誤解された!
……いや、私はいいんだけど。
「もーわかったから、さっさと入るよー」
何度も言い訳を口にする私たちをめんどくさそうにあしらって放送室の中に入っていく。大和くんと目を合わせてから、恥ずかしさを隠すように無言で先輩のあとに続いた。
中では七瀬先輩がひとりで機械をいじっていた。
時間はまだ8時。みんなこれから集まるんだろう。
「ひとり?」
「見たらわかるだろう?」
「うっわ、愛想のない返事ー。っていうか嫌味ー」
蒔田先輩の言葉に、ちっと小さく舌打ちをして再び機械をいじり始めた。
……七瀬先輩ってなんか怖いよなあ。刺々しいというか。榊先輩もとんがっている感じがあるけど。
「もういたのか」
ガラリとドアが開けられて、浜岸先輩がやってきた。
部活が終わった後だからか、額にはうっすら汗が浮かんでいる。
「なにやってんのお前」
「な、なにって、暇だから配線を……」
ずかずかと中に入ってきて、七瀬先輩の手元を覗きこんだ。それにしどろもどろで答えると、「へえ」と意外にも感心するような声を零す。
「オレこういうのわかんねー。これ全部抜いてもお前ちゃんと戻せんの?」
「そ、そりゃあ……このくらい」
このくらい、といえるような量じゃない。
いろんな機械があって、そこからいろんな線が伸びている。機械を少し動かしているから背面が丸見えになっていてその複雑さが素人目にみてもわかる。
素人だからそう思うのか。