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調べ物に没頭しているうちに、いつの間にか3時間ほどが経っていた。
腹が減ったな、と思いつつ顔を上げると、ちょうど百合も目を上げた。
「そろそろ終わりにする?」
「うん………腹減ってきた」
百合はくすりと笑い、「あたしも」と頷いた。
読み終えた本を書架に戻し、残りの本は受付で貸し出し手続きをしてもらい、俺たちは図書館を出た。
夏の強い陽射しが、街を白く照らし出している。
夏は好きだ。
グラウンドでサッカーをしている時など、容赦なく陽に灼かれると、自分の中の汚いものがだんだんと流れ出すような気がする。
「いい天気……」
百合が真っ青な空を見上げて、目を細めた。
そして、ほっそりとした指を立てて、空の真ん中を差す。
「飛行機」
「ほんとだ」
きっとあの中には、夏休みを利用してどこかに旅行をする家族たちが乗っているのだろう。