あたしはというと、何故か自分のことように緊張して心臓がバクバクと大きな音をたてていた。
「何?」
陽のほうを振り返って、ふんわりと微笑む天川さん。
その輝かしいオーラに陽が息を飲んだのがわかり、あたしは心の中で必死に早く誘えと叫ぶ。
そのあたしの念が届いたのか、陽は握りこぶしを作り、少し前のめりになりながら言った。
「天川さん!この間観たいって言ってた映画のチケットをもらったので、今週の土曜日か日曜日どっちがいいですかっ!?」
陽は、相当緊張していたのか、一息で勢いに任せて言い切った。
なるべく自然に振る舞うようにと何度も言ったはずなんだけど、やっぱり彼は顔に出てしまう性格らしく、耳まで真っ赤になっていた。
とはいえ、練習した通り。
“行きませんか?”じゃなくて、“どっちがいいですか?”と聞くことができた。
あえて、行くか行かないかの選択肢ではなく、日にちの選択肢を出すことで、相手は自然と“行く前提で”どちらかを選ぶことが多いため、デートに誘う時は打って付けの方法なのである。
と、紹介しているのをテレビで見たので、陽にもこの方法を使わせたのだ。