あたしは即座にふたりの間に割って入った。
「え?今のダメでしたか?」
「ダメかどうかは、ご本人に訊いてみましょう」
首を傾げる陽。
だから、あたしは星奈に手をマイクのようにして向けた。
「さっきの、どう思われましたか?天川さん」
「んー、そうねぇ。いきなりすぎてビックリしたわねぇ」
頬に手を添えて苦笑する星奈。
答えはともかくとして、天川さんになりきっているつもりなのか、こてこてのお嬢様風すぎて逆に違和感を覚えた。
「そういうわけ。言ったでしょ?あくまで話の流れで、自然を装いながら。意気込むのは一番ダメだって」
「あ、そうでしたね。すみません……」
上手くいかず、しゅんと肩を落とす陽が、なんだか可哀想なんだけど、あたしには可愛くも見えてしまう。
これが、恋をすると出来る、3割増しでその相手のことが良く見えてしまう“乙女フィルター”というものなのか。
だって、あたしにはこのしょんぼりしている陽が、捨てられたいたいけな子犬みたいな可愛さを放って見えている。
でも、何度も言うけど、陽は黒髪メガネの、地味でおとなしい暗い雰囲気の男子で、お世辞にもかっこいいとは言えない。
それなのに……!恋をするって恐ろしいのね!