星奈も帰り、他のクラスメイトたちもみんな帰ってしまった為、この教室には今あたしと有明陽のふたりきり。


放課後、教室で、男子とふたりきり。


普通なら、少しでもドキドキしてもいいようなシチュエーションなんだけど、まったくそんな雰囲気がないのは、相手が有明陽だからなのか。それとも、あたしがおかしいからなのか。


まあ、そんなことはさておき。


「で、あたしが有明くんの“先生”ってどういうこと?」


お互い自分の席に座り、体は向き合っている状態で、あたしは切り出した。


「あたしに何を教えて欲しいっていうの?」


「えっと、その……れ、れん……」


最後の方がボソボソとしていて、あまりよく聞き取れなかった。


「男だったら、はっきり言いなさい!」


「は、はいっ!恋愛について教えて欲しいんです!」


ピシッと姿勢を正した有明陽が、あたしの言葉通り大きな声で勢い良く言った。


「……へ?恋愛?について?」


予想もしていなかったその答えに、あたしは目を丸くする。


有明陽は、顔を真っ赤にして頷いた。


「ええっ!? あたしがあんたの恋愛の“先生”!?」


びっくりして思わず大きな声を上げたあたしに、有明陽は、メガネの奥の目を泳がせながら、しどろもどろに話し始めてくれた。