その様子じゃ、星奈とは話したことはなさそうだね。
あたしの今日の授業プランはこうだ。
今まで話したことのない女子相手に、連絡先を聞く練習をしてもらう。
そうすることで、好きな人の前でも緊張しないで自然に連絡先を聞くことができるようになる。……はず。
「いい?『アドレスをゲットしてやるぜ!』って、あからさまに意気込んで聞くから変な感じになっちゃうの。あくまで話の流れっていうのを演じて、普通に!自然に!」
「わ、わかりました」
陽は、深呼吸をひとつして、星奈に向き直る。
「おはよう、有明くん」
「お、おはようございますっ」
星奈は天川さんを演じてくれているのか、いつもよりおしとやかな様子で話す。
木曜日の朝掃除で会ったという設定なのかな。
うん、確かに連絡先を確実に聞けるのはその時だもんね。
しどろもどろになりながら、なんとか挨拶を返した陽は、続けて言った。
「あの、天川さん」
「なあに?」
「きょ、今日は、ひとつお願いがありまして」
……ん?
もしかして、これは……。
「僕にっ、天川さんの、れ、連絡先を教えてください!」
「はい、カーット!」