「はい?」


首をちょこんと傾げて、あたしを見つめる陽。


そんな陽の姿が歪む。


「って、ええっ!? 朔乃先生どうしたんですか?」


怖い思いをしたからなのか、わかってくれる人に会えて嬉しいからなのか。


涙がこぼれ出ていた。


「ありがとね、陽。ありがとう……」


「え? あ、はい……?」


心配そうにあたしの背中をさすってくれる陽に、あたしの心が初めて満たされていくのを感じた。


安心するような、でもくすぐったいような。


この気持ちをきっとあの二文字で表すのだとわかってはいるけど、陽には好きな人がいる。


かなわないとわかっていたはずの相手に、こんな気持ちを抱いてしまうなんて。


「あたし、相当な馬鹿だね……」


「どういうことですか?」


陽は、わけがわからないと言った様子で目をぱちくりさせている。


あたしは、そんな陽のことが好きなんだ。


初めてちゃんと誰かを好きになれたのに、その好きな人には別に好きな人がいる。


あたしだけの秘密の恋だ。