「朔乃先生ー!大丈夫ですかーっ!?」


名取くんがいなくなると、声が聞こえたほうから予想していた通りの人が、あたしのもとに駆け寄ってきた。


「よ、陽……」


「何もされなかったですか?って、うわぁっ」


陽が慌てる。
それもそのはず、あたしが突然ぺたんと座り込んでしまったのだから。


どうやら腰が抜けてしまったらしい。手も震えている。
自分でも思っていた以上に怖がっていたのかもしれない。


それが、陽が助けにきてくれてホッとしたからか、張り詰めていた緊張の糸が一気に解けた感覚。


「あ、ありがと……」


「いえいえ。何ともなくてよかったです」


にこっと笑う陽。
その優しい笑顔に、次第に心が落ち着き、震えが止まっていく。


「教室に戻りましょうか」


陽があたしの手を引いて、ゆっくりと立たせてくれた。


温かいな、陽の手……。


「どうして、助けてくれたの?」


ドキドキしながら、なんとなく聞いてみた。


「実は、僕、知ってたんです」


そんな答えが返ってくる。


どういう意味だろうと聞き返すと、照れくさそうに頭をかきながら陽は続けた。