だから、“本気だから”ダメなんだってば!
「有明みたいな、あんなダセー男のとこに黙って行かせるぐらいなら、無理やりにでも俺のものにしてやる」
やめて……やめて……!
ここで、こんなふうにキスをされてしまったら、今まで付き合ってた相手にキスからそれ以上のことを拒んできた意味がなくなってしまう。
遊びで男と付き合うようなダメなあたしだったけど、ファーストキスは、初めては、心から大好きだって思える人としたかった。
だから、今まで必死で守ってきた。
それが原因で別れを切り出されても、それだけ自分の中で曲げられなかった。
「お願い……やめて……」
精一杯抵抗しても、つかまれた腕の強さは男女の差を物語っている。
やだ!助けて……!
陽……!
「せ、先生ーっ!! が、学校で、ハレンチなことをしてる人達がいますーーーっ!!」
ぎゅっと目を瞑った時、校舎の角の向こう側から聞こえて、名取くんはパッとあたしから離れる。
「先生っ!こっちです!」
向こう側からなおもそんな声が聞こえる。
この声……まさか……。
「ちっ……。もういいよ。悪かった」
先生に見つかるのを恐れたのか、名取くんはバツが悪そうにあたしに謝ると、そそくさと走って行ってしまった。