見てって言われても……。


強い力でおさえつけられている恐怖を感じつつ、名取くんの寂しそうな目に悲しくもなる。


でも、そんなことを言われても無理なものは無理だ。


「ごめんなさい……。あたしは、名取くんとは付き合えない」


今までも、本気の告白を断ったことはあったけど、ここまで諦めが悪いのは初めてだった。


だから、きちんと名取くんの目を見据えて、もう一度、今度こそわかってもらえるように願いを込めて伝えた。


でも、ダメだったらしい。


その次の瞬間、


「じゃあ、1回キスでもしたら、少しでも俺のこと意識してくれるかな」


笑っているけど、目は冷たいまま。
そんな表情で、抑揚のない声で、名取くんは言った。


「えっ……!?」


一瞬耳を疑ったけど、そのあと名取くんの顔がゆっくりと近づいてきたのがわかって、聞き間違いではなかったと悟る。


「やだ……やめて!名取くん!」


「じゃあ、俺と付き合ってよ」


「それは……できない」


あたしの言葉に、とうとう名取くんがキレだす。


「何でだよ!今まで散々いろんな男と付き合ってきたんだろ?だったら、俺だっていいじゃん!ずっと好きだったんだよ、こんなに好きなんだよ、如月さんのことが!」