「あの……き、如月さん。 僕の“先生”になってくれませんか?」



……はい?


有明陽の言っている意味がよくわからない。


“先生”?あたしが有明陽に勉強でも教えるのか?万年赤点ギリギリのあたしが?というか、有明陽は確か頭が良かったはずだと思うんだけど……。


「ぷ、プリーズ、ワンモア……」


あたしの聞き間違いかなと思い、もう一度言ってもらうようにお願いしたけど。


「如月さんに、僕の“先生”になってほしいんです!」


……聞き間違いじゃなかった。


「えーと、有明くん?ちょっと言っている意味がよくわからないんだけど……?」


「あ、そうですよね!ごめんなさい、突然!」


ぺこりと頭を下げる有明陽につられて、あたしも何故か慌ててお辞儀をする。


すると、「朔乃ー」とあたしを呼ぶ声が今度は別のところからした。


「朔乃、帰ろうよー」


星奈だった。


あたしは少し悩む。


今までまったく話したことなかった人に、いきなりわけのわからないことを言われたんだ、ここで逃げてしまおうか。


何を教えて欲しいって言ってるのかはわからないけど、たぶん、あたしみたいないい加減な人間が“先生”なんて務まるわけない。


そう思って、断ろうと有明陽に目を向けたけど。


「お願いします、如月さん」


有明陽の目は真剣そのものだった。


「……。ごめん、星奈。先に帰ってて」


しょうがない。


話だけでも聞いてみるか。