「な、名取くん……!」
教室を出てすぐ、廊下にいたのは名取くん。
「如月さん……」
告白されて振ったばかりの身としては、少し気まずい。
軽く微笑んで会釈して、その場を去ろうとしたけど、名取くんに腕をつかまれてしまった。
「何……?」
「如月さん。もしかして、有明と付き合ってるから俺のこと振ったの?」
有明……陽のことか。
見られてたんだ。
陽と2人きりで教室に残っているところを。
「違うよ。これには理由があって……。でも、あたしと陽はそんな関係じゃない」
何で、こんなことを聞いてくるんだろう。
名取くんは、びっくりするほど真剣……というよりも怖い目であたしを観る。
「付き合ってないんだったらさ、俺にもチャンスはあるよね?あんな有明みたいな奴よりも!」
“有明みたいな奴”という、あまり良い印象を受けない言葉に違和感を覚えた。
「いや……それは……」
名取くんの言葉の真意はよくわからなかったけど、どっちにしろ気持ちには応えられない。
だから、もう一度きちんと言おうと思ったけど、名取くんに遮られてしまった。
「如月さんのこと、絶対俺のものにしてみせるから」
「ちょっと!名取くん……」
名取くんはあたしの言葉なんて一切聞かず、一方的にそう言って立ち去ってしまった……。