学校へ着いたあたしは、早く陽に会いたい一心で、上履きもろくに履いていないまま教室へと駆け出す。


かかとを踏んだままだったので、途中で転びそうになった。そこで、やっと上履きを履き直す。


「陽っ……」


自分のクラスへ向かうと、真っ先に教室の窓際の一番後ろのほうの席を見る。


でも、そこにはまだ誰もいなかった。


さすがにまだ来てないか……。


少し残念に思いながらも、おとなしく勉強して待っていようと自分の席に座る。


隣の陽の席をもう一度見ると、その脇に陽のバッグがかかっているのに気づいた。


何だ、学校には来てるんじゃん。


どこにいるんだろう。


早くあのアホみたいに満面な笑顔で、「おはようございます、朔乃先生」って言って欲しい。


そう思いながら、ふと窓の外に目を向けた時。


「あっ……」


大きなゴミ袋を2つ持った陽。
そして……。


その隣で楽しそうに笑う天川さんの姿が見えた。


あ、そうだった。


今日は木曜日。美化委員は週に一回の“朝掃除の日”。


陽にとって、天川さんと一緒にいられる数少ない特別な日……。