寂しい、さみしい、サミシイ……。
心の中の孤独を、誰でもいいから埋めて欲しい。
携帯の電話帳のメモリから、つい最近別れたばかりの男のアドレスを引っ張り出す。
ハヤト。
誰でもいい。ひどい別れ方をした元カレでもいいから、そばにいてほしい。
そう思って、連絡しようとした時。
机の上に無造作にあった、化学の教科書が目に入った。
頭の中に、昨日の放課後の時のことがよぎる。
「……陽」
そうだ、今日は化学の小テストがある日。
ちゃんと受けないと、昨日陽に教えてもらった意味がなくなる。
男と遊ぶためにサボるわけにはいかない。
何より、陽の、あのふんわりとした笑顔が見たい。
家を出るにはまだ早いけど、もしかしたら、あの真面目な陽ならもう学校に来ているかもしれない。
「お母さんのバカ」
身支度を済ませ、家を出る前に、誰もいないリビングに向かってぽつりとつぶやいた。