あたしは、ドンっと胸を叩く真似をした。
それを見て、陽はクスクスと笑う。
「日も暮れてきましたし、そろそろ帰りましょうか」
その笑顔のまま、陽がそう言った。
「うん、そうだね」
促されるように、あたしはノートや教科書をバッグにしまい、帰り支度をする。
いつもなら、勉強道具なんて全部学校に置いていくんだけど、今日は家に帰っても一通りやるつもり。
久しぶりに自分の部屋の勉強机が役に立つのだと思うと、なんだか少しワクワクする。
そんなことを考えていると、陽があたしの様子を不思議そうに見てきた。
「どうかしたんですか?」
「ううん、家で勉強するの久しぶりだなーって」
「家で勉強しないんですか?」
「うんー、あんまりね」
母親の代わりに家事をしてたり、今までは男としょっちゅう遊びに行ってたりしたから。
ただでさえ退屈な家にいる時に、勉強するなんてつまらないことは、二の次だった。
でも、問題がわかると素直に嬉しい。