あたしの様子に、みんなが驚いて目を丸くしている。
ちょうど教室に戻ってきた陽も、あたしの声に驚いたのか、不思議そうに視線を向けてくる。
「あ、あたし達はそんなんじゃないから!冷やかすのとか、もうやめてよね。よ、陽も迷惑だと思うし」
顔が熱い。
いつもだったら、こんなふうに冷やかされても全然平気なのに。
軽く流して、ほっとくのに。
違うもん。有り得ない。
こんな地味で馬鹿みたいにまっすぐすぎる奴のことなんて。
第一、陽には好きな人がいるんだよ?
どうして、わざわざ最初から失恋するってわかってる相手のことを好きにならなきゃいけないわけ?
「ねっ、そうだよね、陽!」
肩で大きく息をして、あたしは陽にも「あんたも何とか言ってやって」と目で訴える。
すると、慌てて首を縦に振って、しどろもどろで言ってくれた。
「えっと、ぼ、僕には好きな人がいるんですけど、その人と僕がうまくいくように朔乃先生に手伝ってもらってるんです」
“それだけの関係なので”
と、続けられた言葉に、あたしの心は何故かズキンと痛くなった。