彼の名前を呼ぶと、あたしに気づいて嬉しそうな笑顔を浮かべてくれる。
「朔乃!」
その胸に飛び込んでいけば、高校生の時よりもたくましくなった腕で、すぐに抱きしめてくれた。
「卒業おめでとう、陽!」
「朔乃も、おめでとう」
お互いにお祝いし合ったあと、なんだか照れくさくなり、揃って笑ってしまう。
「じゃあ、行こっか」
体を離したあたしに、その代わりと言わんばかりに大きな左手が差し出される。
あたしは迷わずにその手に自分の指を絡め、ぶんぶんと軽く前後に振りながら、並んで歩き出す。
「確かに、叶わない恋があるのは事実だけど、諦めなければ叶う恋だってあるのよね!」
得意げに言うあたしに、隣から「ははっ」と笑い声が聞こえてきて。
「そうだね。さすがです。
朔乃先生」
あたしは満足げに笑って、繋いだ手を絶対離さないように強く強く握り締めた……。
fin.