「朔乃ー。皆、待ってますよー……」


陽はそう言いつつも、泣きじゃくるあたしの頭に手を置いて、慰めるように優しく撫でてくれた。


それがあまりにも心地よくて、温かくて、絶対この腕の中を、あたしの特等席にしてみせるんだって決めた。


でも、せっかくの2人きりの時間も、もう終わり。


「朔乃〜!ちょっと何して……あら!」


「きゃー!有明くんと朔乃ってば大胆〜☆」


いつまでもやって来ないあたし達を、クラスの皆が教室まで呼びに来てくれたらしい。


「なになにー?2人とも付き合ってるのー?」


「ち、ちがっ」


「“まだ”だよ」


真っ赤になりながら否定しようとした陽の言葉を遮って、あたしは言った。



「まだ付き合ってないけど、これからそうなる予定!」



いつかの大宙くんの言葉を借りて、あたしはクラスの皆の前で堂々と宣言してやった。


陽は恥ずかしそうに困った笑顔を浮かべながらも、その目は優しかった。



高校3年生にして、やっと迎えたあたしの初恋は、まだまだこれから先も続いていきそうです。



覚悟しときなさいよ!有明陽!