もしかして、今まで“先生”付きとはいえ名前で呼んでいたし、そのうえあたしの気持ちまで知った今、名字で呼ぶのは距離をとるみたいで逆に気が引ける……とか考えているのかな。


そんなこと、陽が気にすることないのに。


でも、そんなところも陽らしくて好きだ。
全部、陽が優しすぎるだけ。



「陽、好きです」



陽が明らかに戸惑ったのがわかった。


「本当は、ずっと好きだったよ。陽のおかげで、あたしは初めて誰かを本気で好きになれた。

お母さんのことだって、陽がいなかったら今でもたぶん逃げ続けて、ずっと誤解したままだったと思う。

ありがとう、陽。それと、大好きだよ」


あたしが笑うと、陽は泣きそうなくらい顔を歪ませて、目に溜まった涙がこぼれないようにぐっと拳を握り締めて耐えて。


唇を強く噛み締めているせいで、言葉を発せないでいた。