それはつまり、色と色が混ざりあって、ぐちゃぐちゃにならないため。
あたしは天川さんの代わりになりたいわけじゃない。“あたし”のことを好きになって欲しいの。
だから、あたしの色と天川さんの色を、陽が勘違いしてしまわないように。
時間をかけて、ゆっくりと。
「朔乃先生……」
「もう“先生”じゃないってば」
あたしが肩をすくめて答えると、すっかり困ってしまった陽は眉を下げる。
「じゃ、じゃあ!これからなんて呼べばいいんですか!?」
「好きに呼んでいいよ。名字でも名前でも、呼び捨てでも敬称付きでも」
ますます困ってしまったのか、陽は俯いてしまう。
何をそんなに悩んでいるのか。最初みたいに“如月さん”って呼べばいいのに。