「あのね、これはいつの時代もそうなんだけどね。失恋の1番の薬は新しい恋なんだよ」
右手の人差し指を立てて、ここまではあえて先生っぽく振る舞ってみせる。
「新しい……恋……?」
陽が不思議そうに、尚且つあまり気が進まないような微妙な表情で首を傾げた。
陽って、本当にすぐに顔に出る。わかりやすすぎる。
「その様子だと、まだ新しい恋に進むつもりはないんでしょう?」
「……ど、どっちかというと、まだ……」
陽の中で、まだ天川さんという存在はすごく色鮮やかに残っているんだ。それは、陽を見ていればすぐにわかるし、まだ残る淡い想いに浸っていたい気持ちもわかる。
だけど、それじゃいつまでたっても、恋心は消えないと思うから。
あたしが、陽を先に進ませてあげたい。
でも、天川さんという色の上に、あたしという色で無理やり塗り替える真似はしたくない。