「朔乃先生は、今日はずっと笑ってましたよね。印象的でした」
「ほんとは何回か泣きそうになったけどね、まだやらなきゃいけないことがあったから、泣けないって思って」
おどけたようにそう言えば、陽の柔らかかった雰囲気が堅いものに変わる。
「それって……朝言ってた、“最後の授業”のことですか……?」
陽の問いに、あたしは目を細めて微笑むと、ゆっくりと頷いた。
「じゃあ、さっそく始めようかな」
あたしの言葉を合図にしたかのように、陽は静かに椅子に座る。
あたしも、今までそうしてきたように、陽に向かい合うようにして座った。
「陽。まだ、天川さんのこと好きだよね」
「うっ……バレてましたか……。さすが朔乃先生です」
改めて聞くと、少し気持ちは沈んでしまうけど、同時にそれだけ陽に想ってもらえるようになれば、あたしはすごく幸せな女の子になれるだろうなと思った。