〈これより、第64回卒業証書授与式を執り行います……〉


厳かな雰囲気の中始まった卒業式は、小学校や中学校の時の卒業式とは違って、意外にもあっさりと終わってしまった。


各クラスの代表の生徒が卒業証書を授与したあと、記念品の贈呈やら、送辞と答辞、軽く来賓の挨拶があり、それで閉会を迎えた。


きっと、誰もがあまり充分に思い出を振り返る暇もないまま、終わってしまったことだろう。


でも、最後の卒業式定番の歌を歌っている最中、徐々に周りからすすり泣く声が聞こえてきた。


それを聞くと、あたしもなんだか急に込み上げてくるものがあって、目頭が熱くなる。


だけど、たぶんあたしが泣くのはまだ早い。


この学校ではまだ、やり残したことがある。


涙がこぼれないように、顔をあげて胸を張る。


あたしは、泣いてしまって歌えなくなってしまった子の分まで、大きな声で高らかに歌った。