しばらくして、あたしの机の上にメモがコロンと落ちてきた。
陽からのお返事だ。
開いてみると、そこには男子とは思えないほどの綺麗な字で、こう綴られていた。
【「緊張してうまく話せないかも」って言おうとしたんです。
僕、すごく口下手だから。せっかく天川さんと一緒にいても、何も話せないままかも】
なるほど……。
確かに、あの様子じゃ大変そうだもんな。
【でも、あたしとは普通に話せてるじゃん】
【そうですけど……。朔乃先生はとっても話しやすいから】
あー……たぶん、好きな人ほど話せなくなるタイプなんだな、陽は。
じゃあ、木曜日までに上手に話せる特訓をしなくちゃいけないわけだね。
果たして、あたしで練習相手が務まるのか不安なところではあるけど。
【じゃあ、今日からしばらくは、女の子(特に好きな人)と普通に話せるように練習することにしよう】
あたしがそう返事を送ると、それを読んだ陽は。
「ありがとう、朔乃先生っ」
あたしだけに聞こえる声でそう言い、高3だというのにあどけなさの残る無邪気な笑顔を浮かべた。