勝ち負けというのは少しおかしいかもしれないけど、あたしにできなかったことをして、お母さんを支えてきたのはまぎれもなく海星さんで。
あたしがその海星さんと同じ土俵に立つまでは、到底新しいお父さんとして迎え入れられそうにはない。
きっと、このまま“家族”になったとしても、お母さんと海星さんのことを温かく見守れないと思った。
嫉妬や遠慮や、いろんなものが混じった心を持ったままになってしまいそう。
「だから、今はまだ……。その時が来るまで、待ってもらっていいですか」
自分勝手かもしれないけど、これが、あたしの答えだ。
新しいお父さんは海星さんしかいないと思う。
でも、まだあたしには必要ない。
まずは、あたしとお母さんだけの時間が何よりも欲しいの。
しばらくの沈黙のあと、あたしの話を黙って聞いていたお母さんが突然立ち上がって。
「朔乃!大好きっ!」
そう言って、ガバッとあたしに抱き着いてきた。