なんということだ。
こんなふうに、お母さんが本当に申し訳なさそうな表情で謝ってくる日が来るなんて、今朝のあたしはきっと想像もしていなかっただろう。
「あたしもごめん……。何も話してなかったのは自分なのに、あんなこと言って……」
あたし自身も、こうやって素直にお母さんに謝る日が来るなんて。
それを、陽が温かい目で見守ってくれている。
今日は、一生記憶に残りそうな1日になるような気がする。
「もうバカね。朔乃が謝ることはないのよ」
お母さんはそう言いながらあたしに近づくと、何故か泣きそうな顔をしてて。
そんな顔であたしの頭を撫でてくるから、あたしまでなんだか泣けてきて。
お父さんと3人でまだ仲良く過ごしていた時みたいな、「あたし達は家族なんだ」っていう感覚が、何年ぶりかにあたしの心に訪れていた。
「よかったですね、朔乃先生」
涙で歪む視界の中で、陽が太陽みたいな満面の笑みを浮かべているのが見えて。
「うっ……ぐすっ……う、ん……」
あたしも顔をくしゃくしゃにして、心から笑うことができた。