お母さんがあたしのことをわかってくれないんじゃなくて、あたしがお母さんと向き合うことすら嫌がって、ただ逃げていただけだった。
それが、陽が引っ張ってくれたおかげで、今こうしてお母さんに自分の思うことを伝えられた。
でも、ひどく緊張していて、手が震える。
その手を、陽が包む込むようにして優しく握ってくれた。
「わかったわ、朔乃」
しばらくして、お母さんが静かに口を開いた。
顔を見ると、お母さんも海星も、穏やかに微笑んでいる。
「ごめんね、朔乃ちゃん。俺の事よく知らないのに急に再婚なんて困っちゃうよね。受験が終わったら、ちゃんと話し合おう」
「お母さんもごめんね、朔乃。娘の将来に関わる大事な日のことも知らなくて……」