「お願いします。受験が終わるまで待ってあげてください」


頭をおろして懇願する陽を見て、お母さんと海星はしばらく困ったように顔を見合わせる。


逃げることしかできなかったあたしの代わりに、ここまでしてくれてる陽。
あたしもいつまでも、陽の後ろで隠れている場合じゃないはずだ。


「お母さん……」


「朔乃!」


陽は頭をあげて、あたしの前から退くように一歩後ろに引く。


軽く背中をポンと押されるのを感じて、あたしは大きく息を吸った。


「い、いきなり再婚とか言われても困る。ちゃんと考えたい……けど、今は受験のことで手一杯なの。だ、だから……」


お母さんに、きちんと自分の気持ちを伝えたのはいつぶりだろう。


今思えば、ここ最近はずっと、言いたいことを飲み込むか、爆発してひどいことを一方的に言うだけかのどちらかだった。