「朔乃先生……」


あたしの涙を見て、陽が驚いたように目を丸くする。


そして、すぐに自分の涙を拭って表情をキッと引き締めると、あたしの腕を唐突に掴んで。


「行きましょう、朔乃先生!」


「え?ど、どこに?ていうかもうこんな時間……」


陽はあたしの制止なんか聞かずに、あたしの手を引いて公園を飛び出す。


こんな時間に、一体どこへ行こうというのか。


「よ、陽!」


あたしがもう一度名前を呼ぶと、陽は振り返って少し笑顔を浮かべて言った。


「朔乃先生の家です!」


「へっ!?」


さっきまで、あたしとお母さんのことを話してて、それで何でこうなった?
確かにもうそろそろ家に帰らなきゃとは思ってたけど、送ってくれようとしている様子でもない。


頭の中にたくさんのはてなマークを並べるあたしだけど、それでも連れていかれるがままなのは……。


「で、朔乃先生の家ってどこですか?」


「知らんのかい!」



あたしの腕を引っ張る引力が、すごく心地いいから。