有明陽は、たちまち明るく、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「はい!」
「“はい”じゃなくて、陽も早く呼びなさいよ。女の子の名前も呼べないようじゃ、天川さんとお近づきになんてなれないよ」
照れ臭さから体を有明陽とは逆方向にそむけ、目だけを向ける。
有明陽はまた薄っすらと頬をピンクに染めて。
「さ、朔乃……」
ドキッ。
何だこれは。何故かドキドキが止まらない。
有明陽の緊張があたしにまで伝わってしまったらしい。
男子に名前で呼び捨てにされることなんて、今まで何回も、というか日常茶飯事のことなのに。
こんなに心臓がうるさいのは、相手が有明陽という、今まで関わったことのないタイプだからなのかな。
いや、これから何回もこんなふうに呼ばれるんだ。
ドキドキするのは最初だけ。すぐに慣れる。
そんなことを悶々と考えていたのもつかの間。
「……。先生」
――ズルッ。
次に聞こえた有明陽の言葉に、お笑いコントみたいに転びそうになった。