あの男の人は……。
「如月さん、大丈夫ですか?結構飲んでたんですから気をつけてくださいよ」
「平気よ〜。海星(かいせい)くん」
ああ、この人、文化祭に一緒に来ていたあの若い人だ。
お母さんにベタ惚れな感じで、何なんだこいつと思った人だ。
スーツ姿だと急に大人っぽくなるから、はじめ見た時はわからなかった。
珍しくこの人とはまだ続いていたのか。
あたしにはどうでもいいことだけど。
踵を返して帰ろうとしたあたし。
だけど、それを止めたのは、“海星くん”と呼ばれた人の叱るような声だった。
「朔乃ちゃん。実のお母さんに対してそんな言い方はないんじゃないのか」
「……は?」
あたしは足を止め、ゆっくりと振り返る。
何なんだこの人は。
馴れ馴れしく“ちゃん”付けで呼んだりして、あろうことか説教なんて。
あたしの気持ちなんて何も知らないくせに!