やたらと明るい声で名前を呼ばれ、あたしと改札を通ろうとしていた陽まで動きが止まる。


「朔乃〜〜!」


コツコツとヒールを慣らしながら、あたしのもとに駆け寄ってきたのは……お母さん。


会うのは、文化祭の日以来だ。


「さーくのー♪」


「ちょっと……」


酔っ払っているように見えるけど、まさかこんな早い時間からお酒を飲んでいるのか。


無理やり肩を組んでくるお母さんから何とか逃れて、あたしは距離を取る。


「何なのよ、ちょっと」


「何って、歩いてたら可愛い我が子を見つけたから一緒に帰ろうと思って〜〜」


何それ。誰が一緒にあんたと並んで帰るもんか。


「さ、朔乃先生……」


「あんなのほっといて帰ろう」


陽の背中を押して改札を通ろうとした時、「如月さん!」とまたもや向こうから声がして。


お母さんのもとにスーツ姿の男の人が現れた。