世界でたった1冊しかない、まさしく、“あたしだけの為の”受験対策ノートだ。


ノートから陽に視線を戻すと、陽は目を細めて優しく微笑んで……。



「絶対、一緒に合格しましょうね」



嬉しいのに、答えを返したいのに、胸がいっぱいで苦しくて、言葉がうまく出てこない。


だから代わりに、必死で首を縦にぶんぶんと振った。





あっという間に時間が過ぎ、閉館時間を迎えたので図書館を出たあたしと陽。


暗くなり始めた道を、駅に向かって2人で並んで歩く。


他愛もない話をして笑い合っていると、すぐに駅に着いてしまった。


楽しかった分、寂しさが押し寄せてくる。


「じゃあ……」


また明日、と言いかけた時だった。


「あらー!朔乃じゃなーい!」