そんなことを思いながら、椅子の背もたれに身を預けながら目の前の陽を見つめる。


集中していてあたしの視線には気付かないのか、カリカリとシャーペンを動かす手を止めない。


メガネがたまにずり落ちてくるのか、時折押し上げたりかけ直したりする姿が少し面白い。


陽よりも、今まで付き合ってきた人のほうが俗に言うイケメンと呼ばれる顔立ちの人はたくさんいたはずなのに、何とも思わなかった。


それなのに、どうしてこの目の前のもさっとした黒髪が揺れる度にドキドキしているんだろう。


好きになるって、こういうことなんだよね。


「朔乃先生」


「えっ……」


勉強をしている陽をぼんやりと眺めていると、突然手元を見ていたはずの陽の顔があたしのほうを向いていて。


呆れたような目が、彼の黒縁メガネ越しに見えた。


「朔乃先生、手が止まってますけど」


「はっ!ごめん!」