陽の声色が、いつもの穏やかなものと違って怖い。
振り返ってあたしを見るその目を、虚ろで暗くて、一筋の光もない。
「陽……あの」
「もしかして、あの2人を結ばせる為に、今日僕を引き止めたんですか?」
「……え?」
陽、何、言ってるの……?
頭の中が一瞬真っ白になって、思考回路をショートさせる。
頭が追いついてこない中でも、陽の質問は続き、おかしな方向へと話が進んでいく。
「もしかして、僕にあの場面を見せて諦めさせるために、ここへ連れてきたんですか」
「違っ……」
「叶わない恋に必死になる僕に付き合ってくれてたのは、僕が可哀想だったからですか」
「違う、あたしは!」
「じゃあ、馬鹿で哀れでみじめな僕を、応援するフリして、陰でずっと笑ってたんですか」
――パンッ。
気がつくと、あたしは陽の頬を叩いていた。
これ以上、決めつけられるのは我慢ならなかった。