思わずこぼれてしまった言葉。
困らせてしまうかと思ったけど、あたしの陽に対する本当の気持ちなんて知らない彼は、何を思ったかあたしの背中に左手を回してきた。


そして、空いていた右手で、あたしの頭にそっと撫でるように手を添え……。



「よしよし」



「……!」


顔がみるみるうちに熱くなる。鼓動は速くなるけど、さっきまでの嫌な感じが心の中から消えていく。


「僕には朔乃先生とお母さんの間に何があったのかよくわからないですが……大丈夫ですよ。僕は朔乃先生のそばにいますから」


陽……。


そんなこと言わないでよ。これから天川さんのところに行っちゃうくせに。
そばにいるなんて、簡単に言わないでよ。


そう思うのに、嬉しい気持ちのほうが勝ってしまって、涙が浮かんでくる。


「陽のバカ……。優しすぎるのよ……」