もう嫌だ。何で、何でこんな日に限って。
邪魔してこないでよ。


「朔乃先生!!」


あたしの今年の文化祭は、陽の応援をする為にあるようなもので。


陽の為に、あたしは最後まで“先生”でいなくちゃいないのに。


「待って朔乃先生!!」


後ろから追いかけられて手を掴まれたりしたら、甘えたくなってしまうじゃないか。


「大丈夫ですか、朔……」


「大丈夫じゃない……」


陽の胸に顔をうずめるようにして抱き着いた。


「朔乃先生っ……」


「ごめん、少しの間だけこうさせて」


たじろぐ陽を制し、彼の背中に回す手に力を込める。
すると、しばらくして陽もおとなしくなり、黙ってあたしに抱きしめられていた。


ごめんね、学校でこんなこと、天川さんに見られたらきっと嫌だよね。


でも、今だけはそばにいてほしい。


「行かないで、陽……」