ヘタレな陽に鞭を打ち、あたしはとりあえずお客さんの案内を続ける。
「有明ー。代わるぜ」
「は、はい!」
お化けメイクをして準備が整ったクラスメイトの男子が、脅かし役だった陽と交代。
あたしのもとにも、次の当番の受付担当の子が来てくれる予定だけど、まだお化けメイクに手間取っているのかまだ来ない。
とりあえず、お客さんの案内を続けていると。
「朔乃、頑張ってるー?」
やたら上機嫌な女性の声があたしを呼んだ。でも、高校生にしては大人びたような……。
周りにいる子たちが、声の主のほうを見て「誰ー?」なんて騒ぎ始めてる。
それにつられるようにしてあたしも振り返ると、次の瞬間、言葉を失った。
「……お母さん」
信じられない。一体どういうことなの。
まず顔を見るのも久しぶりなお母さんが、どうして今、あたしの学校の文化祭に来てるの?