「わかった」


首を縦に振るしかなかった。


大宙くんがいたら、また「馬鹿だ」って言われてたんだろうな。


陽は顔を明るくしたあと、「じゃあ、お願いします」と、すぐに真剣な表情を浮かべて、ノートとペンをしまう。


あたしの真正面に立ち直り、その綺麗すぎる純粋な目であたしを捕らえた。


一瞬、風もやんだかと思うほどの静寂のあと。



「好きです」



陽の、優しくも凛とした声が、やたら大きく耳に響いた。


不可抗力で、わかっていても胸が高鳴ってしまう。顔もみるみるうちに熱くなる。


陽は、こんなふうに好きだと伝えてくれるんだ……。


そう思えば思うほど、ドキドキが止まらない。


いくらでもその言葉の余韻に浸れてしまいそうなのに、現実は残酷で。


「ずっと好きでした、天川さんのことが」



“天川さん”……。



わかってるのに、わかっていたはずなのに。


こんなにも苦しいなんて。