隣を見れば、花火に釘付けになっている陽がいる。
花火が上がるたび、辺りが明るくなるその一瞬の間に見える陽の笑顔は、花火に負けないくらい綺麗だった。
好きな人とお祭りに来て隣で花火まで見られるなんて、すごく素敵なシチュエーションなのに、こんなにも切なくなってしまうのは……。
きっと、あたしが陽の“先生”だから。
陽の恋を応援する立場でいなくちゃいけないからだ。
「朔乃先生」
「えっ!? な、何?」
じっと見つめていると、突然陽がこっちを見てきたので、あたしは慌てて平静を装う。
ドキドキするあたしには気づいていない陽は、笑顔を向けてきた。
「朔乃先生。今日、誘ってくれてありがとうございました。おかげですごく楽しかったです」
「いや、あたしは別に何も」
あたしは何もしてないから、と謙遜するものの、陽があまりにも優しく微笑むものだから、思わず息を呑む。