天川さんの鈍さに思わず頭を抱えていると、いつの間にか、陽も大宙くんもそれぞれ3個ずつのヨーヨーを釣り上げていた。
どうやら、2人は互角の戦いを繰り広げているらしい。
一体どっちが勝つのだろうか?
すごいなぁ、と感心していると、勝負は思わぬ展開を迎えた。
「あー!未羅(みら)ー!」
「やっと見つけたー!」
未羅とは、天川さんの下の名前。
天川さんを呼んだのは、彼女がここに一緒に来てはぐれたと言っていた友達だった。
「良かったね、友達と会えて」
「うん。ありがとう、如月さん。私もう行くね」
天川さんは安堵の息をつくと、ちょこちょこと小走りで友達のもとへ向かうと、そのまま人混みの中へと消えていった。
「え?ちょっ、おい、天川!?」
それに気づいた大宙くんは、注意がそれたせいかヨーヨーの釣具をとうとう切らしてしまった。