「でも、如月先生も意外でしたよ。昨日はあんなこと言ったけど、本当に僕の申し出を引き受けてくれるなんて思ってもみませんでした」


有明陽が目を丸くしながら、「驚きました」と話す。
そりゃ、そうだ。だってあたし自身、自分がやろうと思ったことにびっくりしている。


まあ、でも。


「天川さん大好きって気持ちがいっぱいのあんな目を見ちゃったらね……」


右手と右足を同時に出して天川さんのもとに向かう、有明陽の今朝の様子を思い出して、つい笑ってしまう。


「そんなに僕ってわかりやすいですかね……」


真っ赤になって、もじもじとする有明陽。


「うん。たぶん、天川さんも有明陽の気持ち気付いてんじゃないかな?」


「ええぇっ!!」


そのまま後ろに倒れるんじゃないかというぐらいの勢いで、有明陽が椅子に座ったまま仰け反った。


こんなに驚くなんて、本当に自分が天川さんといる時どんなになっているか、全然わかってなかったんだろうなぁ……。


「そ、そんなはずは!だって、あくまでも普通に話してるし!ほんとに!」


有明陽は、ひとりでぶつぶつと言いながら、「うん、大丈夫だ」と言い聞かせている。


この人、本当に見てて飽きないや。
もっと早く、有明陽とちゃんと接してればよかった。このまま何も知らないで卒業してしまっていたら、損をしていたかもしれない。